My Sunday Feeling 0526

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「あぁ、素晴らしい!」
私が子どもの頃、一度も欠かさずに篠笛の練習に通ったのは、城戸口先生が褒めてくれるから。

「音を鳴らすときには、他のことは一切考えてはいけないよ。」
10歳のわたしには少々難題のように感じられた、城戸口先生の教え。

「自己と対話」「音は目に見えないもの」
なのだけれども、城戸口先生はいつも、演奏が終わった後にたくさん褒めてくれた。
それは人生の全てを肯定してくれるような、とても大きなものだった。

それから中学生になり、高校に通い、思春期特有の暗闇の中にいる時でも、城戸口先生はどんな音も

「あぁ、素晴らしい!」

と、何十年も変わらずに褒め続けてくれた。
今の私が、紆余曲折いろいろあっても真ん中に戻って来れるのは、城戸口先生がいてくれたからだ。

鼓笛隊の本を書いている奥中先生から久しぶりにメールが届き、城戸口先生の生まれた年や、亡くなった年のことを尋ねられた。

私の心の中で、城戸口先生は永遠に生きていると思っていたから。
10年も前のことなのに、
まだ心の整理がつかないような、なんともいえない気持ちが込み上げてきた。

城戸口先生の生まれた年。
考えたこともなかった。
実家の母にすぐ電話をして、30年前の名簿を取り出してきてもらい、そこに記された城戸口先生の住所宛に、手紙を出してみることにした。

(もう引越しされているかもしれないな。
ご家族の方も、もしかしたら亡くなられているかも。
今更何十年も前の話をして迷惑かな…。)

不安はよぎったが、たとえこの手紙が届かなくても。これまでの城戸口先生への気持ち、これからも頑張っていきますと思いを込めて筆をすすめた。

ポストに手紙を投函してから一週間後。
城戸口先生の息子さんから、返信が届いた。
そこには、城戸口先生の生まれた年や、激励の言葉、また、忘れていたことを思い出させてくれてありがとうと記してあった。

久しぶりに、心が震えた。
これまで鼓笛隊を続けてきてよかった。
ほんとうによかった。

伝統芸能継承をやめられない理由が、また一つ増えたできごとでした。

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